コラム

COLUMN
2021.09.03

【相続の基礎】寄与分

被相続人の財産の維持や増加について多大な貢献(特別の寄与)をした相続人がいる場合に、その相続人の相続分を優遇して他の相続人よりも多くの相続財産を分け与えることができます。これを寄与分といいます。

この記事では、寄与分について、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。

寄与分が認められるための成立要件とは?

寄与分において注意しなければならないのが、寄与分が認められるのは相続人に限定されることです。

たとえば、被相続人の近隣住民が被相続人の財産を維持するのに多大な貢献をしても、相続において近隣住民の貢献が考慮され、相続財産の一部が分け与えられるということはありません。

民法では、寄与分が認められる場合について、主に以下の行為類型を定めています。

  • 被相続人の事業に関する労働力の提供(事業を手伝うなど)
  • 被相続人の事業に関する財産の提供(事業に出資するなど)
  • 被相続人の療養看護(病気の被相続人を看病するなど)

また、これらの行為類型にあてはまらないその他の方法(自力で生活困難な被相続人の生活を全面的に援助することなど)によって貢献することもできます。

さらに、単なる寄与では足りず、特別の寄与が要求されていることも重要ですが、どのような場合に特別な寄与にあたるのかは個々のケースを見て判断せざるを得ません。

一般論として言えば、被相続人と相続人との身分関係から期待される程度を超えた、多大な貢献があったときに特別の寄与があったと判断することができると考えられます。

たとえば、両親の扶養義務(親族が互いに負う生活保障の義務のこと)を果たすための行為は、当然期待される限度の範囲内である限り、原則として特別な寄与にはあたりません。

この点において、特別の寄与があったと判断する方向になりやすい要素として挙げることができるのは以下の行為です。

  • ①報酬などの対価を得ていなかったこと
  • ②ある程度の期間にわたり貢献を継続していたこと
  • ③結果的に貢献につながったわけではなく、被相続人に対する貢献を主要な目的としていたこと

そして、寄与分が認められるためには相続人の貢献が、被相続人の財産の維持や増加につながったことも必要となります。

相続人の多大な努力があったとしても、それによって被相続人の財産が増加するか、少なくとも維持されなければ寄与分は認められません。

寄与分の計算方法と具体例

特定の相続人に特別の寄与が認められる場合、相続財産を配分する際に特定の相続人にどれくらいを寄与分として分け与えるのかについては、原則として相続人全員による協議によって定めます。

協議が成立しない場合は、特別の寄与をしたと主張する相続人が、家庭裁判所に対して寄与分を定めるよう申し立てることもできます。

寄与分の算定方法を具体例で紹介します。たとえば、父(被相続人)が相続財産6000万円を遺して死亡した時点で、相続人として子A・B・Cの3人がいたとします。

このうち子Aが被相続人の療養看護に取り組んで、その相続財産の維持・増加に貢献し、1800万円相当分が寄与分として認められると仮定しましょう。

この場合、相続分の算定基礎になる財産は、被相続人が持っていた積極財産から寄与分にあたる価額を差し引いて算出します(みなし相続財産)。

上記の具体例では「6000万円-1800万円=4200万円」がみなし相続財産にあたります。

このみなし相続財産を法定相続分に従って、子A・B・Cにそれぞれ1400万円が配分されます。

最後に、子Aに配分された1400万円に寄与分の1800万円を加算した3200万円が、子Aの具体的相続分となります。子B・Cについては1400万円が具体的相続分となります。

寄与分の問題点=実際に貢献した相続人以外の人が考慮されない

寄与分は被相続人の財産維持・増加に対する相続人の貢献について財産上の清算を行う制度だといえます。

けれども実際には、被相続人の子(相続人)ではなく、相続人の嫁(子の配偶者)や孫などが被相続人の療養看護に努めるなどして貢献する場合も少なくありません。

しかし、寄与分の制度はあくまでも「相続人」に認められる制度なので、被相続人が死亡したときの相続財産の配分において、相続人以外の人(相続人の妻や子)による多大な貢献を考慮できないことが問題とされています。

被相続人の孫については、相続発生時に相続人(被相続人の子)がすでに死亡していた場合などは、代襲相続が発生して相続権を取得することがあります。

相続権を取得した場合は、相続人として寄与分が認められる余地が発生します。しかし、相続発生時に相続人が生存している場合は、原則として代襲相続が発生しないので、寄与分が考慮されることも原則としてありません。

相続人以外の親族による特別寄与料の請求が可能に

以上の問題点を受ける形で、2018年成立の相続改正法(2019年7月1日に施行)では、相続人以外の親族(被相続人の介護などを担当することが多い相続人の嫁や孫など)が、相続人に対して特別寄与料として金銭の支払いを請求できるようになりました。

この特別寄与料の請求については期間制限が設けられていることに注意しましょう。

相続の開始と相続人が誰であるか知った時から6か月以内、あるいは、相続開始時から1年以内に請求しなければなりません。

特別寄与料の請求が認められるのは、相続人以外の「被相続人の親族」に限定されています。親族とは、6親等内の血族と3親等内の姻族(配偶者の血族のこと)を指します。

相続人の嫁=1親等の姻族にあたるので、特別寄与料の請求ができますが、相続人の嫁が婚姻届を提出していない内縁の妻にあたる場合、被相続人の親族にあたらないので特別寄与料の請求はできません。

特別寄与料の請求をするには、被相続人に対して無償で療養看護や労働力を提供することで、被相続人の財産の維持や増加に多大な貢献(特別の寄与)をしたことが必要です。

どのような場合が特別な寄与にあたるのかは基本的に寄与分の制度と同じように判断されますが、特別寄与料の請求は「無償で」療養看護などをしたことが要件になっていることに注意しましょう。

また、特別寄与料の請求をするのは「相続人以外」の親族なので、相続人に参加資格がある遺産分割協議以外の場面で相続人と協議が進まない場合、家庭裁判所に対して相続人との協議に代わる処分を請求することが可能です。

相続人の不存在を条件とする特別縁故者への財産分与

特別縁故者とは、具体的に「被相続人と生計を同じくしていた者・被相続人の療養看護に努めた者・その他被相続人と特別の縁故があった者」のことをいいます。

わかりやすく言うと、被相続人と密接な関係があった人のことを指します。

被相続人が死亡した場合に相続人が1人もいなかった場合や、相続人になるはずの人が全員相続権を失っていた場合は相続人の不存在として扱われ、被相続人の財産は国庫に帰属します。

しかし、特別縁故者がいるときは、その人に被相続人の財産取得を認めることが被相続人の意思に沿っているものと考えられます。

特別縁故者は被相続人と同居していることも多く、特別縁故者に対する相続財産の分与を認めることで被相続人が死亡した後の生活保障を図ることも可能です。

そこで、相続人の不存在を条件として特別縁故者に対する財産分与が認められており、相続財産の分与は特別縁故者にあたる人からの申立てを受けて、家庭裁判所の審判によって行われます。

具体例として、特別縁故者にあたる人は婚姻届けを提出していない内縁の配偶者・養子縁組を行っていない事実上の養子などが挙げられます。

それから、被相続人が自分の看護などでお世話になった友人や医療関係者なども特別縁故者にあたるケースがあります。

特別縁故者にあたる者は特別寄与料の請求制度とは違い、被相続人の療養看護などを無償で行った場合に限られないことに注意しましょう。

友人や医療関係者などが報酬以上に療養看護などに尽力したと評価された場合、特別縁故者にあたる余地があるのです。

家庭裁判所は、特別縁故者への相続財産の分与を認めるときは、被相続人の相続財産を生産した後に残っている相続財産全てあるいは一部を特別縁故者に対して与えることができます。

寄与分のまとめ

  • 寄与分が認められるためには相続人の貢献が被相続人の財産の維持・増加につながったことも大事
  • 実際に被相続人に貢献した相続人以外の人(相続人の妻や孫)も特別寄与料の請求が可能に
  • 無償の行いでない場合でも報酬以上に尽力したと評価されれば特別縁故者にあたる

以上、寄与分について解説しました。

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行政書士法人ストレート
行政書士 大槻 卓也
執筆者

行政書士法人ストレートの代表行政書士。「相続・遺言」「許認可申請」「在留資格申請」を中心に活躍。他士業からの相談も多いプロが認める専門家。誠実、迅速な対応でお客様目線のサービスを提供します。

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