コラム

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2021.09.17

【遺言の基礎】遺留分とは?

民法では、遺族の法定相続人としての権利や利益を守るために、遺族が相続できる最低限度の相続分を「遺留分」という形で規定しています。

特定の相続人や第三者への遺贈や贈与によって遺留分を侵害された場合は、遺留分の侵害額請求をすることができます。

この記事では、遺留分とは何かについて、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートがわかりやすく解説します。

遺留分=相続人としての権利や利益を守る

遺留分とは、相続人が最低限相続できる財産のことを言います。

遺産相続では、「法定相続よりも遺言による相続が優先される」という大原則があります。

しかし、「特定の相続人や第三者にすべての財産を譲る」といった内容の遺言であった場合、相続する権利のある人が受け取れなくなってしまいます。

そのため、民法では遺族の法定相続人としての権利や利益を守るために、遺族が相続できる最低限度の相続分を「遺留分」という形で規定しているのです。

遺留分権利者の範囲

遺留分が認められているのは、被相続人の

  • 配偶者
  • 直系卑属(子・孫・ひ孫など)
  • 直系尊属(父母・祖父母・曾祖父母など)

についてだけであり、被相続人の兄弟姉妹には認められていません。

遺留分の割合は相続人が誰かということと、その組み合わせによって異なります。

相続人 遺留分の割合
配偶者のみ 配偶者1/2
配偶者と子1人 配偶者1/4、子1/4
配偶者と子2人 配偶者1/4、子1/8ずつ
配偶者と被相続人の父母 配偶者1/3、父1/12、母1/12
子1人 子1/2
子2人 子1/4ずつ
直系尊属のみ 直系尊属1/3

遺留分侵害額請求権と計算方法について

遺留分侵害額請求権とは、相続人の遺留分が侵害された場合に取り戻すことができる権利のことです。

また、遺留分侵害額請求権に併せて、遺留分の計算方法について説明していきましょう。

遺留分侵害額請求権とは

不公平な遺贈や贈与があり、それによって相続人の遺留分が侵害された場合、遺留分を取り戻すことができる権利があります。

この権利を「遺留分侵害額請求権」といいます。

この権利によって遺留分を侵害された相続人は、贈与または遺贈を受けた相手に対し、遺留分侵害額に相当する金銭支払いを請求することができます。

遺留分の計算方法

侵害された遺留分の額は、以下のような計算で求めます。

  • 遺留分算定の基礎となる財産額(相続財産+特別受益等)×遺留分の割合-実際に受け取った相続財産+特別受益額

遺留分を算定するための財産の価額に算入するのは、被相続人が相続時に有した財産だけでなく、生前贈与の額も含まれます。

第三者への生前贈与は原則として1年以内になされたものが対象です。

また、相続人に対する生前贈与は、特別受益に該当する贈与(10年以内になされた贈与)が対象です。

しかし、贈与する側と受け取る側の双方が遺留分を侵害していることを分かっていた場合、期限より前に贈与がなされたものでも対象になります。

ただし、遺留分を侵害した内容の遺言であっても、侵害された相手から遺留分の侵害請求をされなければ相続は遺言どおり執行されます。

遺留分の侵害額請求の流れ

遺留分が侵害されていることが分かったら、遺留分の侵害額請求をします。

遺留分侵害額請求の流れを説明しましょう。

遺留分侵害請求の意思表示をする

遺留分侵害額請求に決められた手続きはありませんが、まずは侵害している相手に「遺留分侵害額請求」の意思表示をします。

こうして、遺留分を侵害している人と直接話し合いをします。

調停の申立て・訴訟の提起と遺留分侵害額請求の時効

相手が話し合いに応じない場合は、家庭裁判所に家事調停の申し立て、もしくは地方裁判所に訴訟を提起します。

侵害額請求の時効は、相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから1年以内です。

また、遺留分が侵害されている事実を知らなかった場合は、相続開始後10年以内に行わないと請求権が消滅してしまいます。

遺留分侵害額請求の支払い期限の猶予について

2018年の法改正(2019年7月1日施行)によって、遺留分を侵害された人は侵害額に相当する金銭支払いの請求が可能になり、共有を回避することができるようになりました。

また、遺留分侵害額請求を受けた人がすぐに金銭を準備できない場合、裁判所に対して期限の猶予を求められるようになっています。

遺留分侵害額の負担の順序は、遺贈または贈与を受けた額を上限として、贈与を受けた人よりも遺贈を受けた人から先に負担することになっています。

遺留分の放棄は本人の意思によってのみ行われる

遺留分の放棄は相続人本人の意思でなければできません。

遺言者が遺言書に「遺留分の放棄をすること」などと記しても、法的には無効です。

遺留分の放棄は、相続開始後(被相続人の死後)であれば自由にできます。

被相続人の生前にも放棄することができますが、その場合は推定相続人本人が家庭裁判所に申し出て許可を得なければなりません。

遺留分のまとめ

  • 本来は遺産を受け継ぐ権利のある人が全く受け取れない状況にならないよう、相続できる最低限度の相続分を「遺留分」として規定している
  • 遺留分が認められるのは被相続人の配偶者・直系卑属・直系尊属のみ
  • 被相続人の生前に遺留分の放棄をする場合は家庭裁判所の許可が必要

以上、遺留分について解説しました。

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行政書士法人ストレート
行政書士 大槻 卓也
執筆者

行政書士法人ストレートの代表行政書士。「相続・遺言」「許認可申請」「在留資格申請」を中心に活躍。他士業からの相談も多いプロが認める専門家。誠実、迅速な対応でお客様目線のサービスを提供します。

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