コラム

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2021.11.24

【相続対策】相続税対策として自社株式を贈与する際の注意点

オーナー経営者は自社株式の大部分を所有していることがほとんどです。

自社株式の評価額が高額で、相続が発生したときに後継者が相続税の納税に苦慮するのではないかと悩むこともあるでしょう。

相続税の節税には自社株式の贈与が効果的ですが、実際に自社株式を贈与する際の注意点とは何でしょうか?

この記事では、相続税対策として自社株式を贈与する際の注意点について、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。

※相続税のご相談については、提携している税理士を紹介いたします。

株式を生前贈与するメリットとは?

株式は分割しにくい不動産などと違って、小分けにして暦年贈与(毎年110万円まで贈与税がかからない仕組みを利用した贈与の方法)しやすい資産です。

株式を生前に贈与すれば、贈与後の配当金は受贈者のものとなるので贈与する人の将来の財産の蓄積を抑えれば相続税対策となります。

早いうちに株式を生前贈与することは双方にメリットがあります。

また、暦年贈与を考えているならば、早いうちの生前贈与は相続税と贈与税の一体化課税の可能性に備えるという点からも有効でしょう。

どこまで贈与するかを検討すべき理由

贈与といえば基礎控除額の110万円までという認識の方も多いでしょう。しかし、110万円を超える贈与をしても問題はありません。

ただ、110万円を超える贈与を行った場合は贈与税がかかってくるため、税金を支払ってでも贈与するかどうかの判断になります。

その判断は、その贈与税額が将来発生する相続税額より安いかどうかによるでしょう。

どのくらいの金額までなら相続税より贈与税の方が安いかというのは、その人の財産の大きさや法定相続人の数などによって違います。

ただ、相続まで財産の移転を持ち越すのは、相続税の方が安い場合であっても、遺産分けや相続税の納税で家族に負担を残すことになり、気掛かりになる人もいるでしょう。

その場合には、贈与税が少し高くついても、生前に問題を解決する方が安心だともいえます。

自社株式以外にも不動産や有価証券を多数持っている場合は、万が一相続が発生した場合には多額の相続税がかかります。

少しでも相続時の負担を軽くするために、早いうちから自社株式の贈与を始めておくのは大きな相続対策になります。

ただし、自社株式を贈与した場合、贈与税を支払うのは受贈者であるため資金繰りに困ることにもなりかねません。

自社株式を贈与する場合、贈与税を納めるための資金をどのように確保するかも検討しておく必要があります。

生前贈与の注意点

生前贈与にも相続税がかかってしまう場合があるので、いくつか注意すべき点を挙げましょう。

相続開始前3年以内に行われた贈与については、110万円以内の贈与だったとしても相続税の計算対象として相続財産に持ち戻されることになります。

こうなると相続税対策にはならないので、元気なうちから生前贈与を始めることをおすすめします。

それから、毎年同じ時期に同じ内容の贈与をしていると「定期的にお金をもらえる権利」を贈与したとみなされ(連年贈与と認定される)、贈与税が課される恐れがあります。

こうした事態を避けるには、贈与の時期や内容を毎年変えるといった工夫が必要です。

贈与契約書を作成し、贈与の時期や内容が違うことを証拠として残しておくのもいいでしょう。

贈与は自社株式の評価をしてから

自社株式を贈与するといっても、贈与する際に評価額がおよそいくらで、贈与税をいくら払う必要があるのかをよく検討しなければなりません。

なお、自社株式を評価する際、同族株主に該当するかどうかの判断は、「贈与があった後の持株割合」によります。

たとえばオーナー経営者の株式であっても、子がもらう場合は原則的な評価額となります。従業員等の第三者がもらう場合には、特例的評価額となります。

現行の持株割合で判断することのないように注意しましょう。

特例納税猶予の適用が可能かどうか確認する

後継者への自社株式の贈与に際し、特例事業承継税制の適用を受ければ、株数の制限なく、贈与された全株式にかかる贈与税については全額が納税猶予され、相続時に課税財産に加算されます。

また、オーナー経営者の相続時に一定の要件を満たしていれば、贈与税の納税猶予から相続税の納税猶予に切り替えることができ、相続税についても全額が猶予されることになります。

ただし、贈与税の納税猶予の適用を受けていたにもかかわらず、一定の要件を充足することができずに納税猶予を取り消された場合、高額の贈与税を利子税付きで払わなければならないので大変なことになります。

このリスクを避けるためには、相続時精算課税制度と併用して選択するといいでしょう。

後継者に自社株式を贈与する場合には、このメリットのある特例納税猶予の適用を受けるかどうかを必ず検討しましょう。

贈与のタイミングを考える

贈与する場合は、いつ贈与するか、そのタイミングを検討することが大切です。

贈与をする日によって、株式評価の比準要素や基準となる事業年度が異なることがあるからです。

純資産価額は贈与日の相続税評価額(一般的には前期末を基準とする)になります。

類似業種比準価額は、当年の決算を迎える前の贈与であれば、前年の決算数値を基準に株式評価をします。

また、決算を迎えた後の贈与であれば、その決算期の数値を基準に株式評価をすることになります。それらを考慮して、いつ贈与するかを決めるといいでしょう。

相続税と贈与税の一体化課税に備える

暦年課税による少額の株式贈与を繰り返して相続税を節税する手法は、時間はかかりますが確実で安全な方法です。

ただし、令和3年度の税制改正大綱において、相続税と贈与税の一体化が検討されてい
ます。欧米諸国の制度から類推すると以下3通りの方法が考えられます。

  • ①アメリカ型で、暦年課税を廃止し精算課税制度に一本化する
  • ②ドイツ型で、相続開始前10年間の暦年課税による贈与を相続財産に加算する
  • ③フランス型で、相続開始前15年間の暦年課税による贈与を相続財産に加算する

いつからの贈与に適用されるのか、どのような制度になるのかは全く不明です。

しかし、いずれ一体化される可能性は高いので、今から自社株式を贈与を始めてもいいでしょう。

相続税対策として自社株式を贈与する際の注意点まとめ

  • 自社株式を贈与した場合の贈与税の支払いは贈与を受ける人なので、贈与税の資金の確保を検討する
  • 自社株式の評価をしてから贈与税をいくら払う必要があるかを考える
  • 贈与の時期や内容に注意する必要がある
  • 特例納税猶予の適用でメリットを享受できるかどうか確認する
  • 相続税と贈与税の一体化(相続税対策の生前贈与が通用しなくなる)の可能性に備えて早めに贈与を始める

以上、相続税対策として自社株式を贈与する際の注意点について解説しました。

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行政書士法人ストレート
行政書士 大槻 卓也
執筆者

行政書士法人ストレートの代表行政書士。「相続・遺言」「許認可申請」「在留資格申請」を中心に活躍。他士業からの相談も多いプロが認める専門家。誠実、迅速な対応でお客様目線のサービスを提供します。

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