コラム

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2021.11.23

【相続対策】資産保有型会社で特例事業承継税制の適用を受けた事例

長い間、会社で不動産賃貸業を順調に経営していると、株式評価額が高額になります。そのため、オーナーが死亡した場合の相続税負担も大きくなりがちです。

適用要件が厳しい不動産賃貸業で、特例事業承継税制を活用し、株式に対応する相続税額の全額について納税の猶予を受けた事例について詳しく見ていきましょう。

この記事は、資産管理会社で特例事業承継税制の適用を受けた事例について、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。

事業承継税制とは?

事業承継税制とは、後継者が中小企業(非上場会社)の株式等・事業用資産を先代経営者等から贈与・相続により取得した際、贈与税・相続税の納税が猶予又は免除される制度です。

この制度は平成21年に創設されましたが、手続きが煩雑なことから利用が伸びないことを受け、平成30年に適用要件が抜本的に緩和されました。

特例事業承継税制の適用要件

特例事業承継税制の適用を受けるための要件は先代経営者・後継者・会社の3者に対して設けられています。これら要件の詳細について説明しましょう。

先代経営者に関わる要件

先代経営者が満たすべき要件は以下のとおりです。

  • 会社の代表権を有していたことがある
  • 贈与の直前、一族で50%超える株式を保有し、一族の中で筆頭株主であること

贈与によって事業承継をする場合、贈与をする時点で先代経営者は代表を辞任し、後継者へ全株の贈与する必要があります。

後継者に関わる要件

後継者が満たすべき要件は以下のとおりです。

  • 会社の代表者である
  • 一族の中で50%超の株式を保有し、一族の中の筆頭株主であること
  • 20歳以上である(贈与の場合)
  • 役員就任後3年を経過している(贈与の場合)

後継者になるには、承継する会社での役員経験が3年必要になるので計画性が必要になります。

対象会社の要件

対象となる会社が満たすべき要件は以下のとおりです。

  • 非上場企業であること
  • 資産管理会社に該当しない
  • 医療法人・性風俗営業会社に該当しない
  • 資本金や従業員数に関しての要件を満たしていること(以下表参照)
資本金や従業員数に関しての要件
業種 資本金 従業員数
卸売業 1億円以下 100人以下
小売業 5千万円以下 50人以下
サービス業 5千万円以下 100人以下
製造業などその他業種 3億円以下 300人以下

一般的に中小企業のほとんどが対象になるかと思われますが、業種によっては要件を満たせない場合があるでしょう。

また、不動産賃貸業の会社は適用が難しいとされていますが、適用を受けるためにどのような対策をとったのか、特例事業承継税制の適用を受けた不動産賃貸業の事例を紹介します。

適用を受けた不動産賃貸業の事例

適用要件が厳しい不動産賃貸業で、特例事業承継税制を活用し、納税の猶予を受けた事例について紹介しましょう。

不動産賃貸業の株式評価額が財産の1/3を占める

A社は市内に商業ビルや賃貸住宅、ロードサイド店舗などを会社で保有して不動産賃貸業を経営していました。

オーナーは80歳を超え、配偶者はすでに亡くなっています。子どもは娘が3人で、長女の配偶者が養子縁組をして会社の社長として事業を承継しています。

会社所有地の上にオーナーが借入金で賃貸住宅数棟を建築するなどの対策をしていますが、

  • 個人の財産総額が約30億円
  • 債務総額約15億円
  • 相続税の課税価格は約15億円
  • 相続税の総額が約5.5億円

問題は財産のうち、不動産賃貸業である会社の株式評価額が約10億円にもなることです。

後継者の意向で特例事業承継税制の適用を検討

会社の株式に対応する相続税額について特例事業承継税制の適用を受けると、相続税額約5.5億円のうち約3.5億円について納税の猶予を受けることができるので、納税が約2億円で済むことになります。

しかし、納税猶予はあくまでも猶予です。株式を相続して納税の猶予を受ける後継者が死亡するまで株式を持ち続けなければなりません。

事前に後継者にその意思があるかどうかをしっかり確認する必要があります。

このケースでは、長女の配偶者である後継者の意向で、特例事業承継税制の適用を受ける方向で検討を始めました。

適用要件が厳しい不動産賃貸業でとった対策

事業承継税制では、会社の保有する資産のうち、有価証券・賃貸用不動産・ゴルフ会員権・絵画・宝石・現預金・同族関係者に対する貸付金などの合計が70%以上になると資産保有型会社に該当し、適用できないとされています。

また、これらの資産からの受取利息、受取配当、家賃地代などの収入が全体の収入の75%以上の場合には資産運用型会社に該当し、適用できません。

A社の場合も適用できない会社に該当していました。しかし、資産保有型会社や資産運用型会社であっても、「代表者とその同居親族以外の従業員が5人以上」の場合は事業承継税制の適用対象となります。

A社にはもともと収入管理や修理の手配などのための従業員が3名いました。

賃貸物件の見回り・掃除などの管理業務は外注していましたが、この管理業務も社内で行うことにし、新たに人員3名を採用しました。これによって特例事業承継税制の適用が可能になりました。

そこで早速「特例承継計画」を作成して都道府県に確認申請をし、確認書の交付を受けました。これが3年前のことです。

先代経営者が死亡し納税猶予適用へ

今年に先代経営者が亡くなり、長女の配偶者が会社の株式、個人名義の不動産とこれに対応する債務を取得しました。

長女以外の相続人2人には金融資産を等分に分割することで、円満に遺産分割が完了しました。

特例事業承継税制の適用を受ける場合、先代経営者死亡の日から5カ月以内に後継者が社長に就任する必要があります。A社では、すでに後継者が社長に就任していたので、その点はクリアしていました。

そして、死亡の日から8カ月以内に会社が都道府県に確認書を添付して特例事業承継税制の適用を受けるための認定申請を行い、認定書の交付を受け、無事に適用を受けました。

特例事業承継税制の適用を受けるには、会社規模、先代経営者を含む同族関係者の持株割合等の適用要件を満たす必要があります。

また、先代経営者からの相続または贈与から3年以内であれば、他の株式保有者からの相続または贈与についても特例事業承継税制の適用を受けることが可能です。

特例事業承継税制の適用を受けるには、令和5年3月31日までに「特例承継計画」の都道府県への確認申請が必要です。

資産管理会社で特例事業承継税制の適用を受けた事例のまとめ

  • 納税猶予を受けるためには納税猶予の対象株式を保有し続けなければならない
  • A社は特例事業承継税制の適用対象となるため従業員(代表者とその同居親族以外)を増やした
  • 先代経営者からの相続または贈与から3年以内であれば、他の株式保有者からの相続または贈与についても特殊事業承継税制の適用を受けられる
  • 特例事業承継税制の適用を受けるには、令和5年3月31日までに特例承継計画の都道府県への確認申請が必要

以上、資産管理会社で特例事業承継税制の適用を受けた事例について解説しました。

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行政書士法人ストレート
行政書士 大槻 卓也
執筆者

行政書士法人ストレートの代表行政書士。「相続・遺言」「許認可申請」「在留資格申請」を中心に活躍。他士業からの相談も多いプロが認める専門家。誠実、迅速な対応でお客様目線のサービスを提供します。

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