コラム

COLUMN
2021.11.25

【相続の基礎】被相続人が在日外国人だった場合の相続手続き

在日外国人が日本で亡くなった場合の相続は、日本の法律に基づいて行われる場合と、被相続人の本国の法律に基づいて行われる場合があります。

外国籍の被相続人が亡くなった場合、どの国の法律に従って相続手続を行えばいいのでしょうか?

この記事は、被相続人が在日外国人だった場合の相続手続きについて、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。

在日外国人が亡くなった場合の事例

事例
長年日本に在住していたアメリカ人の夫が、先日亡くなりました。相続人は私と子供の2人ですが、日本にある不動産の相続はどのようにすればいいでしょうか。なお、遺言はありませんでした。

ここで手続きのポイントになるのは被相続人の本国法の確認と以下の3つです。

  • ① 相続にかかる身分関係等について公証役場で宣誓供述書を作成
  • ②相続人全員で遺産分割協議書を作成
  • ③ 必要な添付書類を添えて法務局に相続登記の申請
作成書類 宣誓供述書
添付書類 署名者の印鑑登録証明書
作成時期 相続開始後随時
当事者 相続人
作成場所 公証役場
作成費用 11,000円

まずは、相続においてどの国の法律に基づいて行うべきか解説していきましょう。

国際相続の準拠法とは?

相続の準拠法は被相続人の本国法です。よって、この事例ではアメリカ法が準拠法となります。

 もっとも、アメリカは州により法律が異なる不統一法国です。

なので本国法の確定は、その国の規則に従い指定される法、または、規則がないときは当事者に最も密接な関係のある地方の法によって行われます。

アメリカにはそのような規則はないとされています。そのため、アメリカ人の亡夫に最も密接な関係のある地方がどこであるかを検討(出生地・常居所地・過去の常居所地・親族の居住地などを考慮)しなければなりません。

ところで、相続の準拠法としては、主として英米法と大陸法で採用されている2つの立場があります。

英米法では、不動産についてはその所在地法、動産については被相続人の死亡当時の住所地法を適用する「相続分割主義」。

大陸法では不動産と動産を区別せずに、両者をともに被相続人の属人法による「相続統一主義」です。

本事例でアメリカのある州の法が準拠法とされた場合、相続分割主義が採用されている可能性が高いため、不動産についてはその所在地法が適用されることになります。

その結果、反致※により、日本にある不動産の相続については日本法が適用されることになるでしょう。

ちなみに、中国でも動産については被相続人の住所地の法を適用し、不動産については不動産所在地の法を適用するので本事例と同じく日本法が適用されることになります。

相続の準拠法はこのようにして決まり、原則として被相続人につき相続が開始してから終了するまでに生ずる問題のすべてに対して適用されます。

※反致とは?
わかりやすく言うと、日本の法律で「本国の法律によるべきだ」としている場合に、外国側の法律で「日本の法律によるべきだ」とされていた場合は、日本の法律によってのみ処理することが認められることです。

渉外相続の発生が多い韓国の相続法について

ここで、日本において渉外相続が生じることが多い韓国の相続法についてわかりやすく解説しましょう。

韓国の相続法は日本の相続法と類似しています。

ただし、韓国での相続の順位は、第1に直系卑属、第2に直系尊属、第3に兄弟姉妹、第4に4親等以内の傍系血族です。

配偶者は、

  • 被相続人の直系卑属と同順位で共同相続人
  • 直系卑属がいない場合には被相続人の直系尊属と同順位で共同相続人
  • 直系卑属も直系尊属もいない場合には単独相続

となります。

遺産分割制度・相続の単純承認・放棄・限定承認・財産分離・相続人不存在などの制度は、日本の制度とほぼ同じです。

韓国の国際私法によると、相続の準拠法は被相続人の本国法となります。よって、反致の問題は起こらず、大韓民国民法が適用されます。

韓国には戸籍制度がありましたが、2008年1月から家族関係の登録等に関する法律が施行され、同時に戸籍法が廃止されています。

従前の戸籍簿は除籍簿となっており、従来の戸籍謄本の代わりに家族関係登録簿の証明書があります。

在日韓国人の中には出生・婚姻・離婚等の身分事項の届出を日本の住所地の市区町村に行うだけで、韓国の戸籍にそれらの身分事項を申告していないケースが数多くあるようです。

したがって、身分関係が本国の戸籍に正確に公示されていない可能性もあるため、注意が必要です。

相続準拠法および身分関係を証する書面

日本にある不動産につき相続登記をする場合には、登記権利者である相続人が、相続に関する登記原因証明情報を提供する必要があります。

被相続人の本国法がどこかを確認するには?

相続に関する登記原因証明情報のうち相続準拠法、つまり被相続人の本国法がどこであるか、および被相続人と相続人との身分関係は、戸籍制度を有する国であれば通常は戸籍謄本等で確認できるでしょう。

しかし、現在戸籍制度が完備されている国は極めて少ないです。

アメリカや中国にも戸籍制度がありません。したがって、戸籍制度を有しない国においては、戸籍謄本等以外の書面で証しなければなりません。

被相続人の本国自体については、日本に在留する外国人であるならば、在留カードや外国人の住民票に国籍が記載されているため、これらから証することが可能です。

また、被相続人の死亡の事実については、本国の公的機関や在日領事館等が死亡証明書を発行してくれるので、取り寄せることができます。

しかし、渉外相続ではどのような証明書を取り寄せても、日本の戸籍による相続人確定手続きのように完全な証明は期待できません。

そこで、一般的に渉外相続においては各種証明書等による証明を補完する書面として、宣誓供述書の活用します。

宣誓認証制度について

宣誓認証制度とは、公証人が私署証書(作成者の署名・署名押印または記名押印のある私文書のこと)に認証を与える場合において、当事者がその而前で証書の記載が真実であることを宣誓した上、証書に署名もしくは押印し、または証書の署名もしくは押印を自認したときは、その旨を記載して認証する制度です。

この宣誓認証を受けた文書を宣誓供述書といいます。

これは、公証人が私文書について作成の真正を認証するとともに、制裁の裏付けのある宣誓によって、その記載内容が真実、正確であることを作成者が表明した事実を公証するものです。

本事例においても、被相続人のアメリカ人の亡夫の相続人に関しては、自分と子供の2人以外には相続人がいない旨の事実を陳述し、公証人がこれを認証した公正証書をもって相続を証する書面として利用することができます。

宣誓供述書の書式例
事例相続手続四二
令和○○年登簿第○○○号
1 甲野花子は、令和○○年○○月○○日に死亡したアメリカ合衆国の国籍を有する
亡ジョージ・○○○○(以下「亡ジョージ」という。)の妻である。
2 甲野一郎は、亡ジョージの長男である。
3 亡ジョージの相続人は甲野花子及び甲野一郎の2人だけであって、同人ら以外に
は亡ジョージの相続人はいない。
嘱託人甲野花子及び甲野一郎は、法定の手続に従って、本公証人の面前で、この証
書の記載が真実であることを宣誓した上、これに署名した。
よって、これを認証する。
令和○○年○○月○○日
本公証人役場において
東京都○○区○○町1丁目2番3号
東京法務局所属
公証人 署名 印

遺産分割協議書の作成について

遺産分割協議において遺産分割の合意が成立したときは、日本にある不動産につき相続登記をするために必要となります。そのため、合意の内容を記載した遺産分割協議書を作成します。

その際には署名のほか、実印で押捺し、印鑑登録証明書を添付します。

なお、子供が未成年者の場合には、母と子供とは利益相反関係になるため、母が子供を代理して遺産分割協議を行うことができません。

この場合には、母が家庭裁判所に申し立てて特別代理人を選任してもらいます

そして、選任された特別代理人が未成年者を代理して、未成年者の利益を図る観点から遺産分割協議を行うことになります。

なお、遺産分割をはじめとする相続による権利の承継は、法定相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができません。

遺産分割協議に基づく相続登記申請

前述したように、日本にある不動産につき相続登記を行う場合には、登記権利者である相続人が、相続に関する登記原因証明情報を提供しなければなりません。

本事例では、相続人は妻と子どもだけであって、アメリカ人の亡夫には他に相続人がいない旨の証明書・遺産分割協議書・相続人の印鑑登録証明書等を添付し、相続登記の申請をします。

ちなみに、中国には戸籍制度がありませんが、中国国籍の者が日本にある不動産について相続登記を申請する場合には、中国総領事館に対して被相続人と相続人の関係を証する公証書の発行を申請し、添付することで証明できます。

相続人が印鑑登録証明制度のない国の外国人の場合、押印すべき書類に本人が署名して、これに公証人その他の公的機関が、本人が署名した旨の認証文を付した書類が、印鑑登録証明書に代わる本人の意思確認手段として使用できます。

また、在外日本人の場合も、外国の公証人や在外日本領事によって本人自身が署名した旨を証明する方法があり、これが印鑑登録証明書に代わるものとされます。

被相続人が在日外国人の場合の相続税はどうなるのか

日本国内に住所がある以上、在日外国人であっても、国内外すべての財産を対象に相続税の納税義務が発生します。

また、被相続人が日本国内に住所を有していなくても、被相続人または相続人のどちらかが相続開始前5年以内に日本国内に住所を有していた場合は国内外すべての財産を対象に相続税を納めなければなりません。

被相続人が在日外国人だった場合の相続手続きまとめ

  • 相続の準拠法は被相続人の本国法に基づくが、その国の法律で「日本の法律によるべきだ」とされている場合は日本法が適用される
  • 渉外相続では一般的に各種証明書を保管する書面として宣誓供述書を活用する
  • 日本にある不動産の相続登記をする場合は遺産分割協議書を作成する
  • 在日外国人であっても相続税の納税義務は発生する

以上、被相続人が在日外国人だった場合の相続手続きについて解説しました。

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行政書士法人ストレート
行政書士 大槻 卓也
執筆者

行政書士法人ストレートの代表行政書士。「相続・遺言」「許認可申請」「在留資格申請」を中心に活躍。他士業からの相談も多いプロが認める専門家。誠実、迅速な対応でお客様目線のサービスを提供します。

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