コラム

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2022.01.17

【相続手続き】遺産分割協議と詐害行為取消権について

遺産分割協議では各相続人が自由に相続分を決めることができますが、相続人の中に大きな借金を抱えていた者がいる場合、遺産分割の内容に制限が加わることがあります。

この記事では、遺産分割協議と詐害行為取消権について、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。

詐害行為取消権とは

債務者が債権者を害することを知って自己の財産を減少させる法律行為=詐害行為をした場合、債権者は裁判所にその行為の取消しを請求できます。

これを詐害行為取消権(民法424条)といいます。

この制度は、債務を負っている者が自己の財産を減少させることで債権者からの差し押さえを免れることは不当であるとし、これを取り消すことができるとしたものになります。

遺産分割協議と詐害行為取消し

遺産分割は相続の承認を前提とするものであり、身分関係に付随する権利ではあるものの、共同相続人の間で成立した遺産分割協議は詐害行為取消権の対象になるとされています。

債権者による過度の干渉を防止するため、詐害行為取消権は財産権を目的としない行為について行使することはできません。

したがって婚姻・縁組・相続の承認といった身分行為は、債務者の財産を減らすようなものであっても詐害行為取消しの対象とはならないとしています。

相続放棄は詐害行為取消権の対象になるか?

相続放棄のような身分行為については詐害行為取消権の対象とはならないとされていますが、それがなぜなのかを説明しましょう。

遺産分割協議において、債務者の財産を減らす行為は積極的なものとみなされます。

しかし、相続放棄においては、相続人の意思においても、法律上の効果からも、財産の減少が消極的な行為にすぎないとみなされます。

また、相続放棄のような身分行為は他人の意思で強制すべきではありません。相続放棄を詐害行為として取消し得るのであれば、相続の承認を強制することと同じであり、これは不当であるとされています。

遺産分割協議において、一部の相続人が全く遺産を相続しないことは、実質的に相続放棄と変わらないので、両者の扱いを異なるものにすべきではないと思う方もいるかもしれません。

しかし、相続放棄は相続資格を遡及的に喪わせるものであるのに対し、遺産分割は相続の承認後の相続人同士での持ち分の譲渡となります。両者は明確に異なるものと考えられているのです。

詐害行為取消権の行使について

詐害行為取消権が認められるには、債務者が無資力であることの他に、以下のような条件に該当している必要があります。

  • 債務者が遺産分割によって債権者の権利を侵害すると認識していた
  • 遺産分割によって利益を受けた相続人がその事実を認識していた

債務者が債権者を害することを知ってした行為でなければ詐害行為とはいえないため、取消しの対象外となります。

また、遺産分割によって利益を受けた相続人=受益者が事情を知らなかった場合、利益を剥奪してまで債権者を保護する必要はないとされています。

ところで、詐害行為取消権の行使は、裁判所に訴訟を提起することになるため、判決が確定するまでに時間を要します。

その間に、詐害行為の目的財産が処分されてしまうと、判決が確定しても返還請求できない恐れがあるため、事前に当該財産の処分禁止の仮処分を申し立てるといいでしょう。

詐害行為取消権に期限はあるのか?

詐害行為取消し請求は、債務者が詐害行為をしたことを債権者が知ってから2年経過していると訴訟提起ができなくなります。

また、詐害行為自体があった時から10年が経過していた場合も訴訟提起ができなくなるので、期限が設けられていることには注意しましょう。

遺産分割協議と詐害行為取消権のまとめ

  • 遺産分割協議は詐害行為取消権の対象になる
  • 相続放棄による財産の減少は詐害行為取消権の対象にならない
  • 詐害行為取消権の行使には、債務者が無資力であるほか、債権者の権利を害すると知ってした行為でなければならない
  • 詐害行為取消権の期限は債権者が詐害行為を知ってから2年以内、また、詐害行為自体があってから10年以内となる

以上、遺産分割協議と詐害行為取消権について解説しました。

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行政書士法人ストレート
行政書士 大槻 卓也
執筆者

行政書士法人ストレートの代表行政書士。「相続・遺言」「許認可申請」「在留資格申請」を中心に活躍。他士業からの相談も多いプロが認める専門家。誠実、迅速な対応でお客様目線のサービスを提供します。

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