コラム

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2023.03.30

【相続基礎】遺贈とは?相続・死因贈与などとの違いや注意点について

遺贈とは、遺言によって相続人以外の人物にも財産を一方的に与えることです。

遺贈によって、内縁の配偶者や慈善団体などに財産を譲ることができますが、遺贈をするには必ず遺言書を作成しなければなりません。

この「遺贈」と、相続・相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)・死因贈与は似ているようで違いますが、どんな違いがあるのでしょう?

この記事では、

  • 遺贈と相続・相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)・死因贈与との違い
  • 遺贈の種類と放棄の方法
  • 遺贈する場合の注意点(遺留分)
  • 遺贈が無効なるケースについて

について、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。

遺贈とは?相続や死因贈与との違い

遺贈とは、遺言書を作成することで相続人以外の人物にも財産を一方的に与えることをいいます。

遺贈と次の3つとの違いについて説明していきましょう。

  • 相続
  • 相続させる旨の遺言
  • 死因贈与

相続と遺贈の違い

相続においては被相続人が死亡するとともに相続が開始するので、法定相続人に対しては遺言書を作成しなくても自動的に財産が引き継がれます。

一方、遺贈をする場合は必ず遺言書を作成しなければなりません。遺言書に記すことで相続人以外の人物にも財産を与えることができます。

自分の死後、相続人以外の誰か(内縁の配偶者や慈善団体等)に財産を与えたい場合は遺言書を作成しましょう。

特定財産承継遺言(相続させる旨の遺言)との違い

特定財産承継遺言は特定の財産を相続人に相続させる遺言のことで、相続人だけに対して行えます。

たとえば「〇〇市〇〇町にある建物を相続人Aに相続させる」と遺言書に記載した場合、「与える」ではなく「相続させる」と記すのがポイントです。

こう記すことで〇〇市〇〇町の建物は相続人Aのものになることが確定し、これに反する遺産分割ができなくなります。

死因贈与と遺贈の違い

死因贈与とは死亡したことを原因として贈与を行うことをいい、贈与者と受遺者の間で「贈与者が死亡した際に財産を贈与する」という約束をすることで成立する契約のことです。

遺贈が財産を一方的に与えるものなのに対して、死因贈与は当事者双方の合意に基づいて行われる契約です。

死因贈与により不動産等の財産を取得した場合、相続によって財産を取得したものとされるため、受遺者には贈与税ではなく相続税が課税されます。

死因贈与についての詳細はこちら

遺贈の種類について

遺贈は特定遺贈と包括遺贈の2種類に分類されます。

それぞれの詳細と注意点について説明しましょう。

【特定遺贈】特定の財産を遺贈できる

特定の財産を遺贈することを、特定遺贈といいます。

たとえば、遺言書に

  • 〇〇市〇〇町にある土地を相続人Bに遺贈する
  • 現金100万円を相続人Bに遺贈する

と記載するのが特定遺贈です。

遺贈遺贈はいつでも放棄できる
民法986条1項によれば、遺言者が遺言によって放棄の期間を定めていなければ、特定遺贈はいつでも遺贈の放棄が可能です。放棄の意思表示は遺言執行者に対して行います。
遺贈の放棄の詳細はこちら

【包括遺贈】相続財産の全部または分数的割合で示した一部を遺贈する

相続財産の全部あるいは「〇分の〇」という分数的割合で示した一部を遺贈することを、包括遺贈といいいます。

たとえば、遺言書に「相続財産の全部を相続人Cに遺贈する」「相続財産の3分の1を相続人Dに遺贈する」と記載するのが包括遺贈になります。

包括遺贈の最大の特徴は受遺者が相続人と同じ地位に立つこと(民法990条)なので、不動産や現金などの積極的財産とともに借金などの消極財産も取得します。

包括遺贈の放棄は3か月以内の申述が必要
包括遺贈では受遺者が相続人と同一の権利義務を有するとされているため、相続放棄・承認のルールに則り、放棄する場合は3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。
また、包括遺贈の一部のみ放棄することはできません。
遺贈の放棄の詳細はこちら

遺贈する場合は遺留分に注意すること

財産を遺贈する場合、遺留分に気を付けなければなりません。

民法では、遺族の法定相続人としての権利や利益を守るために、遺族が相続できる最低限度の相続分を「遺留分」という形で規定しています。

遺贈によって遺留分を侵害された相続人が遺留分を主張してきた場合、遺言者が受遺者に与えたかった割合の財産を譲ることができなくなるかもしれません。

受遺者を相続トラブルに巻き込まないためにも、遺贈する場合は遺留分を侵害しないよう配慮する必要があります。

遺留分権利者の範囲は?
遺留分は被相続人の配偶者、直系卑属(子や孫など)、直系尊属(父母や祖父母など)についてだけで、兄弟姉妹には認められていません。

遺贈が無効になるのはどんな場合か?

遺言を作成した時に想定していた状況であるとは限らず、状況によっては遺贈が無効となる可能性もある点には留意しておきましょう。

遺贈が無効になるケースを4つ紹介します。

①遺言の無効・取消しがあったとき

遺言の取消し・撤回があった場合や、遺言が方式に則っていなければ遺贈は無効となります。

また、民法第966条による無効も適用されます。

民法第966条
(被後見人の遺言の制限)
第966条 被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者若しくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は、無効とする。(以下省略)

②遺言者が死亡する前に受遺者が死亡した

遺言者が死亡する以前に受遺者が死亡した場合は、遺贈の効力は発生しません。

③停止条件が成就する前に受遺者が死亡した

たとえば、「自分の死後、妹が婚姻したときに建物を妹に譲る」といった、停止条件付遺贈についての遺言が残されたとして、妹が独身のまま死亡した場合は遺贈が無効となります。

④遺贈の目的物が遺言者の相続財産でなかったとき

「土地を相続人Aに譲る」との遺言が残されたものの、実はその土地が贈与者の持ち物ではなかったことが判明した場合、遺贈は原則として無効となります。

他人物の遺贈についての詳細はこちら

遺贈とは?相続や死因贈与との違いまとめ

  • 被相続人の死亡後、相続人に対しては遺言が無くても自動的に財産が引き継がれるのが相続、相続人以外の人物にも財産を譲りたい場合に遺言書によって行うのが遺贈
  • 特定財産承継遺言(相続させる旨の遺言)は相続人に相続させる遺言のことで、相続人だけに行えるため、遺贈とは異なる
  • 遺贈が財産を一方的に与えるものなのに対して、死因贈与は当事者双方の合意に基づいて行われる契約のこと
  • 遺贈には特定遺贈と包括遺贈があり、いずれも放棄できる(包括遺贈の場合は3ヶ月以内の期間制限あり)
  • 相続トラブルを回避するため、遺贈する場合は遺留分に配慮する必要がある
  • 遺言作成時に想定していなかった状況になった場合、遺贈が無効になる可能性がある

以上、遺贈と相続・死亡贈与などとの違いについて解説しました。

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行政書士法人ストレート
行政書士 大槻 卓也
執筆者

行政書士法人ストレートの代表行政書士。「相続・遺言」「許認可申請」「在留資格申請」を中心に活躍。他士業からの相談も多いプロが認める専門家。誠実、迅速な対応でお客様目線のサービスを提供します。

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