コラム

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2021.11.09

【相続対策】認知症対策となる家族信託と遺言代用信託の活用

相続対策で注意すべきことの1つに、認知症リスクがあります。認知症になり判断能力が失われると、相続対策に支障が出てしまいます。

認知症リスクの対策として、家族信託や遺言代用信託を活用することで生活と財産を守ることができます。家族信託や遺言代用信託の仕組みとデメリットを把握して、自分に必要かどうかを考えてみましょう。

この記事では、認知症対策となる家族信託と遺言代用信託の活用について、日野市・八王子市・立川市で相続手続き・遺言作成サポートをしている行政書士法人ストレートが解説します。

認知症になると法律行為が無効になる

認知症は今や私たちにとって身近な病気といえるでしょう。認知症になると、徐々に判断能力が低下していくため、法律上「意思能力がない」状態だと判断されると、法律行為を行うことができなくなります。

不動産の売買・生命保険の契約・子どもや孫への生前贈与・遺言の作成など、意思能力が必要とされる法律行為は行っても無効となります。

さらに、詐欺被害などを防止する観点から銀行口座は凍結されるので、預金の引き出しや振り込みなどもできなくなる場合があります。

意思能力があるかどうかは医師の診断や介護記録、家族の証言などをもとに判断されます。

遺言作成と同時に意思能力がある客観的証拠を残す

認知症になってしまうと、症状が進行するにしたがってできることが限られてくるので、自分の財産を思い通りに遺したいなら、意思能力があるうちに遺言を残すなどの対策が必要でしょう。

このとき、遺言を作成した時点で意思能力があったことを証明できるものを残すことも重要です。

遺言作成時には認知症がごく軽度で意思能力が十分にあったとしても、症状が重くなっていけば意思能力がない状態になる可能性もあります。

すると後になって、いつまで意思能力がある状態だったのか、周りの家族にもわからないということが起こり得ます。

後々、遺言に納得のいかない相続人が、遺言者は遺言作成時に意思能力がなかったことを主張し、それが認められると遺言が無効になってしまうことも。

そういった事態を防ぐには、診断結果などの意思能力があることを客観的に証明できるものを残しましょう。

高齢になった親の生活を守る家族信託とは?

家族信託は所有権を「財産権」と「財産を管理・処分できる権利」に分けて、後者だけを子どもに渡せる契約のことです。

たとえば、父の財産管理を長男が行う場合、

  • 父が委託者(財産を受託者に引き渡して受託者に信託財産の管理・処分の指示をする人)かつ受益者(財産の利益を受ける人)
  • 長男が受託者(委託者から財産を引き受けて信託財産を管理・処分する人)

という家族信託を設定することで、生活と財産を守ることができます。

この方法では、父が子どもに現金を信託し、子どもがその現金を管理します。その現金を定期的に父に渡し、父はその現金を生活にあてる、といった形になるので贈与税がかからずに、かつ高額の詐欺被害も防ぎつつ親の財産管理を行うことができます。

契約を変更することで、そのときの状況に応じた信託のカスタマイズもできます。

認知症等で意思能力に不安がある高齢者の財産管理を行う制度には成年後見制度もありますが、財産が比較的少額で成年後見制度を使うほどではないケース、手続きを簡単にすませたいケースなら家族信託が向いている可能性もあるでしょう。

遺言書の代わりに利用される遺言代用信託

最近は、信託銀行などが取り扱う商品「遺言代用信託」は、煩雑で時間のかかる相続手続きを回避するために利用されることも多く、遺言書の代わりに利用する人も増えています。

遺言代用信託とは、生前に自身(委託者)の財産を他人(受託者)に信託して、生存中は委託者自身を受益と、自身が死亡した後は子や配偶者等を受益者とすることで、自身の死亡後における財産分配を達成しようとする契約のことです。

遺言代用信託のメリット・デメリットについて説明していきましょう。

遺言代用信託のメリット

遺言代用信託は、煩雑で時間のかかる相続手続きを回避するために利用されることが少なくありません。

相続手続きにはある程度の時間が必要ですが、遺言代用信託を設定しておけば、死亡直後に必要となる葬儀費用や遺族の生活費等を確保することができるのです。

遺言代用信託によって、相続手続きを経ずとも被相続人の死亡後すぐに、自身の葬儀費用や配偶者の生活費等を信託財産から工面することができます。

また、遺言代用信託は死亡後も受託者が財産を管理するため、細かい規定をすることが可能です。

たとえば長男に障害があり、一括で現金を相続されるのが不安な場合、「月々10万円ずつ払う」という設定ができたり、使用目的に制限を設けることもできたりします。

特徴的なのは、自分の死後のことだけでなく、先々の相続についても指定できることです。「後継ぎ遺贈型の受益者連続信託」といいます。

たとえば、「自分の死亡後に現金1億円を月々30万円ずつ長男に」と指定しておき、さらに「長男が死亡したら残りは国に寄附」などとすることも可能です。

遺言代用信託の注意点とデメリット

遺言代用信託で信託できるのは金銭のみであり、不動産や株式などの財産は信託できません。

また、信託できる金額には最低額や上限が設けられています。預貯金が多額である場合は遺言代用信託だけで引き継ぎを完結させることはできないでしょう。

銀行によっては契約時に多額の手数料が必要となる場合もありますが、遺言代用信託は原則として中途解約をすることができません。解約する場合は解約手数料がかかります。

それから、遺言代用信託の際には、期間の制限に注意しましょう。信託契約から30年を経過した後は、1回しか受益権を承継できないとされています。

信託法上は受益権の指定を先々まで指定できますが、期間制限のことを考えると通常は3回までの設計になります。

遺留分についても注意しなければなりません。法定相続人には遺留分があるので、分配によってはトラブルになりやすい部分です。

このように遺言代用信託の制度は広まってはいるものの、いくつか注意すべき点もあります。

また、取り扱っている金融機関によって商品の内容が異なっていたり、トラブルになった場合の判断や対処策など、裁判例も少ないことから現時点では不明なところも多かったりします。利用の際には十分な検討が必要です。

遺言代用信託と遺言信託の違いとは?

遺言代用信託と似ているものに遺言信託があります。

  • 遺言信託とは・・・特定の者に対し財産の譲渡・担保権の設定その他の財産の処分をする旨、ならびに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理または処分およびその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法による信託のこと

このように遺言信託はあくまでも遺言です。民法で定められた厳格な方式を遵守しなければ無効になってしまいます。

これに対して遺言代用信託は契約なので、そのような規律はありません。

また、遺言信託では遺言執行手続きが必要となります。そのための時間を要し、かつ遺言執行に際して利害関係人との間でトラブルが生じるリスクがあります。

これに対して遺言代用信託では、遺言執行手続きは不要となります。

認知症対策となる家族信託と遺言代用信託の活用のまとめ

  • 認知症によって意思能力がないと判断されると、法律行為を行ったとしても無効になる
  • 意思能力があるうちに遺言作成し、遺言作成時に意思能力があったことを客観的に証明できるものを残す
  • 家族信託は成年後見制度より柔軟な財産管理ができる
  • 遺言の代わりに利用できる遺言代用信託は財産管理に細かい規定を設けることができる
  • 裁判例が少ないこともあり、遺言代用信託は想定外の事態への対処が難しいことも

以上、認知症対策となる家族信託と遺言代用信託の活用について解説しました。

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行政書士法人ストレート
行政書士 大槻 卓也
執筆者

行政書士法人ストレートの代表行政書士。「相続・遺言」「許認可申請」「在留資格申請」を中心に活躍。他士業からの相談も多いプロが認める専門家。誠実、迅速な対応でお客様目線のサービスを提供します。

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